「迷宮のヒトビト となりの中国人」 目次および概要  

目 次 概 要
−ビジネス編−
1.「食」より「職」
2.どんでん返しは当たり前
3.外ヅラは美しく飾るもの
4.「メンツ」は何よりも大事
5.弁才ある人こそ男前
6.「真面目で誠実」もウリにはならない
7.急いては事を仕損じる
8.酒の席で人品判断
9.笑顔と眼力で人物判断
10.結婚や出産では仕事を辞められない
11.そんなことでは謝りません
12.仕事はスッピン勝負
13.残業するなんておバカさんよね〜
コラム ホストの心得


 私は、二〇〇二年から二〇〇五年までを中国で過ごした。この本は、そのときの私の実体験から知り得た中国人観を綴ったものである。

この三年間を振り返えってみると、もちろん、わくわくするような楽しい思い出もたくさんできたが、一方で、日本人と中国人の価値観や考え方、文化の違いを認め、受け入れることができず、引きこもりになった時期もあった。

日常生活でも仕事上でも日本人の常識が通用しない、仕事の進め方や取り組み方が日本人とまったく異なるという事実は、私にとってかなりのストレスになった。

 しかし、愚痴をこぼしたくても周りに相談できる日本人の友人がいるわけでもない。それに、内容が仕事上の問題であれば、安易に口にすることもはばかられる。そんな状態の中、私は何度も会社を辞め日本に戻ることを考えた。しかし結局的に、私は中国に留まった。それは弱い私を支え続けてくれた中国人の友人たちのおかげだ。

 「日本人や日本企業の常識を押し付けても中国人は耳を貸さないよ。まずは、中国人の仕事のやり方や進め方に理解を示してあげることね。彼らをうまく動かすためには、彼らから仲間だと思われることよ」

さまざまな問題にぶつかるたびに、彼らは忙しい仕事の合間を縫って時間をつくり相談に乗ってくれた。日本人の常識、自分の価値観が通じないことに苛立ち悩む私の気持ちをしっかり受け止め、真摯に話を聞いてくれる中国人の友人たち。私はその姿を見てようやく気づいたのだ。

異文化の人間がコミュニケーションをとるためには、お互いの違いを認め、その違いやギャップを受け止める気持ちが必要なのだと。最初から「違い」を「ヘンだ」「おかしい」と捉えてしまうと、コミュニケーションをとる以前の段階で誤解や摩擦が生じてしまう。これでは会話すら始まらない。

大切なのは、違いを理解し、尊重する気持ちを持つこと、その上で心を開いてつき合うことなのだ。私は、それを「人づきあいの達人」である中国人の友人たちから教わった。 

中国滞在の三年間、私は共産党の一党独裁という国情が持つ国家体質と国民意識の矛盾、発展途上をクリアし、今や世界の大国として経済発展華々しい中国の表と裏を垣間見てきたつもりだ。

 さまざまな矛盾や軋轢を抱えながらも、
「世界の工場」から「世界の消費地」へとゆるやかに転換している中国。そしてそんな中国にビジネスチャンスを求め滞在する日本人は十一万人強、進出している日本企業は二万二千社を超える。

年々増大する中国への日本人や日本企業の流入。しかしその一方で、日本人ビジネスマンの多くが中国の文化や慣習、社会制度や国民性への理解が乏しいゆえに、不満や誤解を抱えたまま仕事をしていることが多いのが現状だ。これでは、実際と異なる中国のイメージや片面的な情報に振り回されて、感情的に好悪を示すことにつながる。

 現実に少しでも近い中国庶民の素顔を知り、中国人とのつき合い方を冷静かつ客観的に考える材料を提供したい、というのが本書を著した動機である。

―お国柄・慣習比較―
1.公開夫婦喧嘩は当たり前
2.目指すは高学歴&高収入
3.「カネ」は「幸福感」の絶対尺度
4.タダじゃ、サービスしないわ
5.死よりも怖い「老い」
6.海外でルンルン買おう
7.縁起担ぎが大好き
8.超ド級のお国自慢
9.六十歳からハッピーライフ
10.カワイイのは我が子と人妻
11.夢は一国一城の主
12.上海人は「甘い」ものが好き?
13.盗人ちゃいますぜ!
コラム 「およばれ」のマナー
―人付き合い編―
1.役に立ってこそ「友人」
2.お礼や遠慮は水臭い
3.「身内づくり」がモノをいう
4.家は社交の場
5.挨拶やお礼は形式より気持ちが大切
6.公平&公正が原則
7.男はツライよ
8.以言伝心
9.友達もネットでゲット
10.亭主元気で留守がいい
コラム 正装はご法度
−雑編−
1.日本のファッション大好き娘
2.食事で十歳若返る1?
3.マンション買ってウハウハ生活
4.子どもは国の宝


 「迷宮のヒトビト となりの中国人」 内容抜粋 

−ビジネス編−
本書「3.外ヅラは美しく飾るもの」より


 外づらがいい人というのは結構いる。
 貧乏なのに友人との買物でブランド品を買ってしまう人、仕事がないのに、いかにも忙しそうな素振りをする人、カレー一つ上手く作れないのに、コンパでは趣味が料理だと言ってしまう人。
あっ、それは私でした、と反省しつつ気付いたのだが、自分を含め日本人のなかには、外面を飾り立てる見栄っ張りが意外に多い。しかし中国人と比べれば、日本人の見栄の張り方たるや可愛いらしいものだ。

西安に留学していた頃、友人の旅行会社で日本人旅行客向けのガイドの採用をしたことがある。雇ったのは、成績優秀なうえに日本語もぺらぺらな女性二人。応対も丁寧であり、頭の回転もすこぶるよかった。ところが採用して間もなく、日本人ツアー客の彼らへの苦情が殺到したのだ。ガイドなのに日本語が下手。愛想もないし親切心に欠ける。ミスをしても謝らず言い訳ばかりする等々。慌てて私は彼らを呼び面談をしたのだが、そのときの彼らの態度といったらない。 

注意したらふて腐される。口を開けば客の悪口ばかりで自分は悪くないと言い張る。おまけに、なぜか日本語まで下手になっている。私は愕然となった。では面接のとき見た彼らは何者だったのか。きっと就職用の日本語と日本人に好かれるマナーや応対を猛勉強し、実力以上の自分を演じたに違いない。悔しいことだが、私は履歴書や外面の美しさに目が眩み、彼らの本質を見抜けなかったのだ。

このように、中国人は本質を隠したいときや裏に見られたくないものがあるとき、必要以上に外面を飾り体裁を繕う傾向がある。日本人ビジネスマンは、美しい薔薇には必ず棘があるということを忘れてはならない。

☆ワンポイントアドバイス
“データや資料の数字を鵜呑みにするな 実体を見て判断せよ”

−人づき合い編−
本書「8.以言伝心」より

 
 日本人の既婚男性のみなさまにご質問。
 あなたは、奥様に対して、結婚してからどれくらい「愛やいたわりの言葉」「感謝の言葉」をかけているだろうか。
「毎日言ってるよ」という男性は、多く見積もって一万人に一人くらい。そんな希少価値の男にはぜひ会ってみたいと思うほど、日本人男性の多くが奥様へのちょっとした愛の声掛けができないようだ。

しかし彼らとて、ずっと声掛けをサボっていたわけではない。恋人同士の時には、ベッドのなかでの睦言は当たり前、白昼のデートの最中でも、人目をはばからずに愛を囁いたり抱擁したりと、女性が愛に溺れ夢心地になってしまうほど、あの手この手で愛情表現をしていたハズなのだ。

ところが、その女性がモノになった途端、彼らは安心しきって努力を怠ってしまう。デキタ男性でも結婚から一、二年がいいところ、多くは半年で愛情表現怠慢症に陥ってしまうのだ。まさに、「釣った魚にエサをやらない」のが日本の既婚男性の姿と言える。

一方、中国人の既婚男性はどうだろうか。彼らの愛情表現のデパートリーは、聞いている私が赤面してしまうほど、微に入り細をうがっている。それは、万が一、釣った魚にエサをやり忘れて離婚騒動になったらたまらない、という本音もあろうが、一方で、仲のよい夫婦でもしょせんは赤の他人。心の中のことは、言葉にして伝えなければ通じないと考えているからだ。

夫婦間でそうだから、友人や知人なら言わずもがな。仕事上の交渉でも友達付き合いでも、お互いの意見や気持を伝え合い、話し合うことから始まると中国人は考えている。

中国人とうまく付き合っていくためには、以心伝心に期待してはならない。あくまで、自分の気持や意見を言葉で表現し伝えることが大切なのだ。

☆ワンポイントアドバイス
“「あうんの呼吸」は日本人の発想 言わなければ通じないと心せよ”