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『いいオトコの条件』 「その存在が説得力だ」と思わせる男はステキだ。 「空き樽は音が高い」とからかわれ、「口ばかり達者で軽薄な男=鼻持ちならないヤツ」と思われていたのも今は昔。発する言葉に意味はなく、言葉を発すること自体が目的化しているような空虚な会話を楽しみ、面白いネタ一つしゃべれない男はネクラだと思う彼女たちに「ネクラ」と「寡黙」は違うと説教したところで通じはしないだろうし、その昔流行ったCM、「男は黙ってサッポロビール」を見て、「そうよ、男はこうでなくっちゃ」と息巻いた私の心情など理解してもらえないだろう。 しかしそんな「寡黙な男」を愛する気持ちを理解してくれなかったのは、何も日本人の女の子だけではない。中国人のギャルやオバサマたちもまったく理解を示してくれなかった。 上海で働き始めたばかりの頃、職場の世話好きな同僚や友人がいろんな中国人男性を紹介してくれたことがある。それは彼らが私に好意を持っていたからというよりは、私が哀れでならなかったのだ。というのも、中国人から見れば、私のような三十路女性は、「売れ残り」という可愛いらしいものではなく、すでにトウが立ってしまった部類に入るからだ。このままほったらかしにしてしまうと干からびてしわくちゃになるだけ、それではあまりに可哀想だ。ここは人肌脱いでやろうかと、まぁこの程度のことだ。 噛んでも噛んでも口の中に筋が残るフキほど食べたくないものはないが、そのフキ同然の私にも彼女達は一生懸命嫁ぎ先の心配をしてくれた。とくに会社の同僚達の意気込みは、見合い話を嫌になるほど持ちかけてくる私の両親よりも迫力があった。何しろ初っ端から私を取り囲み質問攻めにしたのだから。 「亜子の好きなタイプは?」「給料はどの程度あればいい?」「どんな性格の人がいい?」「学歴はどの程度がいいの?」・・・・・・云々。イチイチ答えるのは疲れるが、希望を聞いてくれるだけありがたい話と思わねばバチが当たる。私は証人尋問を受けているような神妙な心持で、それらの質問に真面目に返答したのだが、そのうち尋問が驚くべき展開を見せ始めた。 彼女達は私の意見を聞いてくれていると思っていたら、これがまったく聞いていないのだ。最後は当事者である私を差し置いて、皆であれこれ意見を交わし始めたのだ。 「私は、亜子には明るくてユーモアのある男が合ってると思うわ」 いやいや、ちょっと待ってくれ。私は男のクズで結構、結構どころか「男のクズ」をぜひ紹介してください、と私は声を大にして言った。ところがその意見は彼女達に完全に一蹴されたのだ。彼女達はぐるりと私を取り囲み、自信満々に言い切った。 「騙されたと思って会ってみなさい。明るくてやさしくてイイ男だから!」 尋問はいつの間にか脅迫に変わっていた。ここまで命令口調で言われたら逆らうことなどできない。私は彼女達の強引な勧誘にまんまと載せられ、揃いも揃っておしゃべりで口達者な男たちを紹介されるハメになったのだ。 この話からも分かるように、中国人女性の「寡黙な男嫌い」は歴然としている。自分の意見や主義主張、価値観を言葉で明確に表現できる人こそ、賢く頼りがいのある男だと考えている。 いろんな話をしなくても、「目と目で通じ合える」とか「一緒にいるだけでホッとする」という条件で恋人を選ぶ日本人女性に対し、あんな話やこんな話をユーモアたっぷりに話す弁才ある男性を好む中国人女性。ここにも、「以心伝心」という感覚を持たない中国人の素顔が見えて面白い。 |